SPECIAL EXPERTER

料理研究家

Chinami Hamauchi

浜内 千波

プロフィール

徳島県海部郡海陽町(旧海南町) 出身。
料理研究家として、40年近く活動していて、自身で様々な料理本を出版し、現在ではテレビや雑誌などでも活躍している。
1955年
徳島県生まれ。大阪成蹊女子短期大学栄養学科卒業後、証券会社OLを経て岡松料理研究所へ入所。
1980年
東京都中野坂上にファミリークッキングスクールを開校。
1990年
株式会社ファミリークッキングスクールの社長に就任。
1991年
企画フードハウスを設け、食ビジネス全般において、ホテルや食品メーカー、コンビニエンスストアの食品開発・その販促活動を支援。
2005年
ファミリークッキングスクールを東中野へ移転。
2006年
便利で楽しいキッチン用品「Chinami」ブランドを立ち上げる。
2012年
「ファミリークッキング・ラボ」を開設。

今の活動は、
料理を通して「生き様」を伝えること

浜内千波
根底は、
その先に見える思想
The root is the thought that appears in the future
The root is the thought that appears in the future

料理研究家として、メディアや本の出版など、様々な活動をされてきておりますが、最近の主な活動内容を教えてください。

浜内
私自身、雑誌や本などの活動、そして、40年近く通っている料理教室がベースとなっておりまして、この2つが今までの私の出発点でございます。
現在では、細分化されておりまして、マスコミやTVの方にも参加させていただいております。最近ではTVの収録プラス、情報番組に関しても、お料理に関するテーマをいただいたときには、そちらにも出させていただくようになりました。
見えないところでは、企業のプロデュースもさせていただいており、現在は1 0 社近くあります。見えるところでは、講演のお仕事もとても多くなりました。
私のお仕事の中でも、以前は見えるお仕事が90%ぐらいだったのが、今では逆転をしまして、見えないところのお仕事が90%ぐらいとなってきました。
The root is the thought that appears in the future

活動の幅が更に広がってきているのですね! 企業のプロデュースというのは具体的にどのようなお仕事なのでしょうか?

浜内
大手のレストランのメニュー開発や、食品メーカーの企業様からのご依頼も多いです。その中で、メニューの提案や、料理の傾向などのマーケティング、コンサルティングのお仕事をいただいております。大きいところでは、事業所給食を1 日に1 2 0 万食出されている会社のアドバイザーもさせていただいております。新入社員が500名も入る基調講演でお話をさせていただいたことや、毎月会社を訪問していろいろな話をさせていただいております。そういった機会の中で、お話させていただく内容も料理の話だけでなく、思想とか哲学の話をすることも少し多くなりました。これが非常に難しいです。
The root is the thought that appears in the future

先生の中でも、今までとは違う新しいステージというイメージですね。

浜内
そうですね。1 番通じていることなのですが、毎日やっていくことの積み重ね、これは料理の技法とか栄養や科学の話ではなく、その先に見える思想、これがちゃんとしていないと成り立たない。これは料理だけでなく、いろいろな世界においても、根底がそこにあるものと思っています。いろんな企業様に呼ばれてお話をする機会があるのですが、先日も大手企業様にお伺いしてお話をさせていただく機会もあり、料理を通しての「生き様」み たいな、そういった話をするお仕事も多くなってきました。本当に根底は料理というものがあって繋がっているのですが、そういったことが私の今の主だった仕事になっています。

浜内千波が考える、
人生のターニングポイント

浜内千波
浜内千波
その道での
1番を目指し、
日々努力すること
Striving to be the number one on the road
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現在の活動に至るまで、どのようなターニングポイントがあったのでしょうか?

浜内
ちょっとお話が変わるんですが、有名な野球選手が引退した際に、記者がこう質問しました。
『引退されて、お辞めになったら監督になられるのですか? 』そのあと、彼は即座に答えたんですね。 『人望がないからできません。』という風におっしゃたんですね。私は、まさしく彼だから言える言葉だと思いました。
というのは、自分が『はい。人望があります! 』というのは絶対に言えないと。人望とか人格というのは、他人様が決めることなんですね。価値というのは、自分が決めるものではないんですよ。 ご自分が何かしたいというのは、皆さんもそれぞれ、目的や目標をお持ちだと思います。でもそれを認めてくださるのは、世間様なんですね。だから、自分がチャンスを掴むとか、掴まないとか、『私はいいのよ~ 』とおっしゃる方は、それでいいと思います。皆さんが会社員になられて、『自分は社長になりたい! 』とおっしゃる方もいらっしゃるし、『僕はそこそこでいいんだ。』とおっしゃる方もいらっしゃるかと思います。
自分のターニングポイントみたいなものは、社会を自分でどう捉えて、どう進んでいくか、出口のことまで考えて、人生というものを考えているのかどうかの、単なる違いだけだと思います。
でもそれをしっかりと自分が思っているイメージを絶えず、毎日どう続けるかが大事なことなんです。重要なのはターニングポイントではなく、日々の積み重ねなんですね。
『僕は人望があるからね、野球の監督をやれるよ。』とは絶対に彼はおっしゃらない。これはどなたも同じことだと思いますね。彼が欲しいという方は、絶対にまたどなたかいらっしゃるわけですから。人格や人望とかそういったものは、他人様が評価をされるところであるということですね。だから、やっぱりそこの考え方が、私は人とちょっと違うかもしれません。それがカラーというところでしょうか。
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そうやって日々積み重ねてきたことが、今につながっているというか…。

浜内
そうかもしれませんね。私の性格が、小さなことでも、『なんでやねん? 』『どうして~ ? 』という風に非常に突き詰めるタイプで、それで次に進んでいかないとダメな性格なので、やっぱり日々研究はしています。
でも昔は研究家としても本当に自信がなくて、『恥ずかしいわ~ 』という毎日でしたけれども、でも今になっては本当に料理研究家と胸を張って、もし料理研究家でいくならば、本当に1番になろうと思っていますね。料理研究家の名に恥じないような、人様にお話できるネタ作りは、自分でノートを作ったり、毎日のことを積み重ねて、それをいろんな方たちに説明ができるようにしていく。次の世代にどうしていかなければいけないという軸は、絶対に持ち合わせているつもりでございます。
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素晴らしいですね。

浜内
そういう風な感じでターニングポイントというか、私にとってのチャンスはあったかもしれません。でも、「チャンス」と「自分が思うターニングポイント」は違うと思います。
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その時に今までの積み重ねがあったから、そのチャンスも掴めたということですよね。

浜内
対応ができたというか。それが自分で1 0 0 点満点かというと違います。勉強は一生のものですからね。こんなに世の中の流れが早いんですもの。情報とかエビデンスはどんどん変わってきていますからね。
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スマホなんかもなかったですものね。

浜内
なかったです! もう乗り遅れないように、何を勉強するかということですね。ただ、やっぱり料理だけを思ってやっていたのでは駄目ですからね。

料理のプロは、単純ではなく
多角的に捉える能力が必要

浜内千波
浜内千波
まずは自分が
興味を持って調べ、
発見をする
At first we investigate with interest and find
The root is the thought that appears in the future

家庭で簡単に料理が出来るポイントを教えていただけますか?

浜内
料理は理論と栄養と技法と科学と、それを全部持ち合わせて料理だと思っています。私は料理って六面あると思っているんですけど、今の皆さんはきっと一面なんですね。でも一面を二面にすることは、これはちょっとだけご自分が体験をして、実行していかないと、絶対に一面にしかならないんですね。皆さんよくおっしゃるの。 『簡単で、美味しいレシピを紹介してください。』って。簡単にとおっしゃるけど、本当は『あなたの面はいくつ持ってらっしゃるの? 』というところから始めていかなければならないのですが…。
ただしそういった場合の皆さんの一面は、美味しいものをいただきたいというところですので、まず一番に、素材をちゃんと美味しいものとして見極めることですね。二面はやっぱり調味料ですね。料理というものは、素材があって、調味料があって、そして調理法がある。この3つなんですね。
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それが基本の三面みたいなイメージですかね?

浜内
そうですね。そこが全て重なっていくと、美味しいという面になると思うんですけど、皆さんがいきなり栄養を考えて、それからプロセスを考えて、相手のことを思って料理をするということは難しいと思うんです。だからまずは、三面の一面だけちょっと紐解いてみると、優先順位としては素材、次に調味料、それから調理法ですね。
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そうすると、まずは素材をスーパーなどでいいものを選んで、見極められるというのが重要ということでしょうか?

浜内
そうですね。トマトでもりんごでも全く同じものはないんですね。実際に買ってきて、食べてみて、『これ美味しいね! 』というように、それを外から見てどうやって見分けるか。昨日私ね、スタッフの子に人参を買ってきてとお願いをしたんです。しかも、2 時間ぐらいかけて帰ってきて… 。笑
そしたら、全く見る視点が違うので…。
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それはどのように違ったんですか?

浜内
『形がいいものを選んできました。』と言われて、『そうなの~ 』って見てみると、シュッと三角形なんですね。それで葉元のところに芽が出てるの。もうまるっきり視点が違いましたね。笑
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そうだったんですね。

浜内
野菜が1 種類だけだったら全て教えることができるんですけど、やっぱり種類もいっぱいありますしね。まずは自分が興味を持って調べること。仮設を立てて、それを実行して、そして発見ができる。 これの繰り返しが社会なんですね。自分で勉強して、そして分からなかったら聞きなさいと。相談を受けるのが、社会であると思うんです。
学生時代は教育の場所であるから、お父さんお母さんのしつけ、それから指導として学校の先生たちが教えなければいけない。これが教育の場所なんですね。
社会は協力する場所。力を合わせて大きな力にするところが教育の場所。だから私は教育( 指導) をするつもりは全くないんです。 まずは調べてそれからやってみて、分からなければ聞いてくるということがなければ、それは自分の身にならないということなんですね。
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確かにただ教わるだけだと身にならなくて、また同じことを繰り返してしまいそうですよね。

浜内
自分でお金を出して買ってきて、それを切って食べてみて、比べて、どっちが美味しいのかを自分で実感しないと、絶対に覚えないと思います。それが毎日の積み重ねなんですね。

料理研究家として
次の世代に伝えていきたいもの

浜内千波
浜内千波
食事は一番の心の栄養
だからこそ、
大切な人と共に…。
Eating is the most important nutrition
The root is the thought that appears in the future

先生は料理研究家ということですが、外食はどのぐらいの頻度でされるのですか?

浜内
私は、全くといっていいほど外食はしませんの。もちろん、スタッフ等と一緒に行くことはありますけど。毎日、どんなに遅くなっても、料理を作って夫と一緒に食べますね。これはもう鉄則でございましてね。 撮影で残ったお野菜もできるだけ持って帰らないように、皆さんと同じように、日曜日に買い込んでそれを1 週間でどう過ごすか。
これは、他の料理研究家の方がいろんな材料を使ってお料理しているのは、私は虚像だと思っていまして。撮影、仕事のためのお料理を作ることは、私もよくしますけれども、できるだけバランスを取って、皆さんが悩んでい らっしゃることを一緒に悩みたいと思うんです。そうでないと発信ができないと思っていますから、本当にもう『コンチクショー』って思いながら、『毎日どうしようかな~ 』って考えて、『大ピンチ~ 』みたいなことがまた 楽しくて。笑
だから日々の暮らしはとても私にとっては、実感ですね。虚像と違うところですかね。
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それはやっぱり先程お話されてきた、日々の積み重ねに繋がってくるんですかね。

浜内
そうですね。イチ人間として、また企業の人間としてと、いろんな面を持ち合わせた上での料理研究家になりた いと思っていますので。いろんな方からいろんなご依頼いただいたりするのですが、きっと企業と普段生活して いる私たちの橋渡しをできることが、私にとっては料理という職業が繋いでくれているのかな、なんて思ってい ます。多分、皆さんがストレスを感じていたりとか、幸せとか、家族とか、将来、未来という言葉に繋がってい く。虚像じゃなくて、実像を私が少しお話をすることにおいて、ヒントになってくれているように感じています。
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やはり日々の積み重ねが実像ということなんですね。

浜内
やっぱり人間の体の部分の根底は、血をそして体温を作っているものは、食べ物であるということですね。心と いうものがやっぱりその手を通して、相手の顔を見ながら、一緒に食事をして、そして感じるものなんですね。 そういったことが一番大事なところかなぁって思ったりします。
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日々の積み重ねと先生の料理への思いが伝わってきますね。

浜内
そうですね。最近では、日々の生活に、どんどんとAIが家庭の中に侵入してきていますが、先日とある番組で AIとの対戦で料理を作ったことがありましたの。私もすごく悩みましたけど、AIで計算されたお料理と、私の 考えたお料理がどのぐらいの戦いになるんだろうって、半分不安と半分考えなきゃという思いで、本当に真剣に やりました。
向こうが出してきたレシピはとっても品数が多かったんですね。でも私は一般の家庭の人間として、金銭感覚も 持たないといけないし、手順も考えなきゃいけないし、家族の健康や思考も考えないといけないと。これはAI つまり人工知能の機械では、絶対に考えられないと思いました。
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結果はどうだったんですか?

浜内
見事、3-0で勝ちました!
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素晴らしいですね! !

浜内
ありがとうございます! でもそれは私だけの喜びじゃなかったんですね。『良かった! 』って世の中の主婦の皆 さんが、毎日頑張って作っているそのお気持ちがね、誰よりも何よりも勝るものだと実感したんです!そういう 実感がしたので、私はまさしく間違っていなかったかなぁと思いました。
やっぱり心を通して、何かを伝える役割は人間であり、そして家族であるということですね。これが実感できました!
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それはホント嬉しい体験ですよね! 美味しさももちろんありますが家庭料理というのは、美味しさだけじゃないというのも伝わってきますね。

浜内
そうなんです! だから、やっぱり愛情が一番の栄養であるということですね。子どもにとっての親は太陽なんで すね。だから世間の親御さんには、下手だとか、料理が嫌いとか言っている場合ではなく、次の世代にどう伝え ていくのかを考えて、『お料理をしてちょうだい! 』と思います!
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確かに家庭でもコンビニとか出前は便利なものですけど、やはり大切なお子さんや旦那さん、そして恋人のために、愛情を込めて料理を作るということが、大事ということですよね?

浜内
そうです!本当にそういう気持ちが何よりも勝るということなんですね。そして家庭で料理をするということ は、子どもが大きくなった時に、何を食べてきたか分かるかどうか。例えば、人参を見た時に人参と分かるかどうか。
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人参ですか?

浜内
私も先日ある番組に出させていただいた時に、レタスとキャベツが分からないという方がいたりして… 。意識して食べていなかったり、ホールを見たことがないという風におっしゃっていました。
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それはちょっと驚きですね! 確かにコンビニやスーパーでも最近はカット野菜や煮物だったり、既にカットされたり、調理されて売っているものもありますしね…。

浜内
便利なものが出てきていますが、いつの間にか機械に制覇されているってことに気づくんですね。機械だけの調 理器具は、材料を入れるだけで料理ができてくるものもあるし、声も発してくれたりして、最初はラッキーって 思ったりするんですよね。でも私たちは子どもたちのロボットではないので、機械がないと口にできるものがないとなったら、日本は終わりかなって思います。
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そういったことも料理を通じて、次の世代に伝えていくことが重要なんですね!最後に一つだけ先生の今後の目標をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

浜内
生命というのはとっても大事で、その生命を食べることで私たちは生きているんです。そして、人間は5本の指があって、頭があるわけですから、やっぱり知恵と工夫を持つことで、いろんなことに繋がっていくということを伝えたいなぁって思っています。生きる力というものが、食事に関しては一番の心の栄養になるためにも、大事にしていけたらいいかなぁと思いますよね。そういったことを役立てられるお料理に関するお仕事に就いていることも幸せですし、もっともっと磨いていきたいと思っています!
浜内千波
浜内千波
願わくは
どんな便利な時代でも
笑顔あふれる家庭料理を
Hopefully, home cooking full of smiles in any convenient times